Yamakatsu's diary

男は黙ってカント

研究者

教授の研究室に行く機会があったため、ついでに、二年間どのように大学と付き合い、どう研究するのがいいか、という話をした。彼は私に次のように言った。

「二年間で出来ることなんで高々知れている。教授に劣らぬ研究をするには、君が興味を持つ対象と君が出来るかぎり接近することだ。私はそこしか見ない。そのためには、流行に流されない、興味関心の軸を身につける必要がある。そのために乱読しなさい。小説でも、知的なものも、そうでないのも。本じゃなくとも、映画でも、音楽でもいい。そして啓蒙される機会を多く持ちなさい。」

此処で言う「興味」は「問」と同義であろう。思想家は本質的に問に従属している。問なくして思想家はあり得ない、とバタイユは言う。意識化された問であれ、そうでない問であれ、それと真摯に向きあうこと。「私はそこを見る」でなく「私はそこしか見ない」と言い切った彼に痺れた。彼を選んだのは間違いでなかった、と思った。

同時に、非常に厳しい大学院生活になるだろうことを自覚した。「乱読しなさい」はおそらく比喩だ。それは「目を見開き、自分と、自分が属している世界を見ろ」ということだ、と私は解した。それが如何に困難なことか、二年間で学ぶのだろう。どうせ行くのなら必死に食らいつきたい。